1. ベロシティとは?
ベロシティは、アジャイルチームが1スプリントで完了できる作業量を示す指標です。通常、ストーリーポイントを用いて計測され、スプリントごとにどれだけのタスクを完了できたかを数値化します。過去のスプリントのベロシティの平均を参考にすることで、今後のスプリントでの作業量の見積もりが精度高く行え、チームの生産性や進捗状況を把握しやすくなります。
2. ベロシティの計測方法
ベロシティを計測するための手順を紹介します。
- ステップ1:ストーリーポイントの設定
- 各タスクやユーザーストーリーに対し、相対的な難易度や労力を示すストーリーポイントを割り当てます。1スプリントの作業量を見積もる基準として、タスクの粒度を一定に保つことがポイントです。
- ステップ2:スプリント終了時に完了したストーリーポイントの集計
- スプリントが終了した時点で、完了したすべてのタスクのストーリーポイントを合計し、ベロシティとして記録します。スプリント完了までに未着手や進行中で終わったタスクのポイントは含めず、完了したタスクのみをベロシティに含めることが原則です。
- ステップ3:複数スプリントでの平均ベロシティを算出
- 数回のスプリントで計測されたベロシティの平均を算出することで、今後の作業見積もりの参考とします。平均ベロシティが分かると、計画に基づいたタスクの調整がしやすくなります。
3. ベロシティを使った生産性の改善方法
ベロシティを向上させ、チームの生産性を高めるための方法を紹介します。
- 過去のスプリントを振り返り、改善ポイントを洗い出す
- レトロスペクティブでスプリントごとのベロシティを確認し、達成度が低かった原因や改善点を話し合います。例えば、作業の障害となった問題があれば、それを解消する対策を検討します。
- タスクの粒度を均一に保つ
- タスクの粒度がバラバラだと、見積もりが難しくなりベロシティが安定しにくくなります。タスクの粒度を一定に保つことで、ベロシティが安定し、次スプリントの計画が立てやすくなります。
- WIP制限(Work In Progress)を導入
- 一度に進行中のタスク数を制限することで、作業の集中度が上がり、タスクの完了スピードが向上します。たとえば、進行中のタスクは各メンバー1つまでに制限するなどのルールを設定すると、作業の進捗が見えやすくなります。
- ベロシティに基づいた見積もりの精度向上
- 過去のベロシティを参考に、今後のスプリントで達成可能な範囲を見極めると、無理のない計画を立てやすくなります。計画が現実的であれば、スプリント完了の達成度が向上しやすくなります。
4. ベロシティの読み方と注意点
ベロシティをチームの生産性向上に活かすためには、いくつかの注意点を押さえておくと効果的です。
- ベロシティは生産性の「単純な」指標ではない
- ベロシティはチームがスプリントごとに完了できる作業量の指標であり、単純な生産性指標ではありません。ベロシティの数字を増やすこと自体が目的にならないよう注意が必要です。
- スプリント間のベロシティの変動を想定する
- チームのベロシティは、スプリントによって変動することがあります。予期せぬ問題やタスクの難易度によってベロシティが下がる場合もあるため、複数回の平均を参考にして判断することが大切です。
- チームの成長と共にベロシティの基準を見直す
- チームが成長したり、新しいスキルやツールを導入したりすることで、ベロシティが変化することもあります。定期的に基準を見直し、最新のチームの能力に基づいて計測と改善を行います。
5. ベロシティの計測と改善に役立つツール
ベロシティの管理や改善に活用できる代表的なツールを紹介します。
- Jira
- Jiraには、ベロシティチャートをはじめとする分析機能があり、スプリントの進捗や完了ポイントの確認がしやすくなっています。スプリントの結果を自動で可視化する機能が充実しているため、データ管理が容易です。
- Trello
- Trelloはカンバン方式でタスク管理ができるため、シンプルなチームでのスプリント管理に便利です。手動でベロシティを集計する場合は、スプリントボードを活用し、完了したタスクのポイントを記録します。
- ExcelやGoogleスプレッドシート
- ベロシティの集計や分析にExcelやGoogleスプレッドシートを使う方法もあります。スプリントごとにタスクの完了状況を記録し、グラフを作成することで視覚的に進捗を把握できます。
スカンクのコメント:明日からできるベロシティ改善の3つのアクション
- スプリントの「レトロスペクティブ」で改善点を明確に
明日からのレトロスペクティブで、完了したベロシティを確認し、進捗が遅れた理由や改善ポイントを共有してみましょう。特にボトルネックになったタスクを洗い出すことで、次のスプリントに役立つ具体的な改善が見えてきます。 - タスクを「粒度の揃った単位」で分割して進捗を安定化
次のスプリント計画で、すべてのタスクを同じぐらいの粒度に分けてみましょう。タスクが均一な大きさであれば、ベロシティが安定し、計画も立てやすくなります。 - 「WIP制限」を設けて作業の集中度を高める
チームの生産性向上を目指すなら、進行中のタスク数に制限を設けてみましょう。各メンバーが1つのタスクに集中できるようになると、作業効率が上がり、ベロシティも改善しやすくなります。
これらのアクションを取り入れることで、ベロシティの計測と改善がスムーズになり、チーム全体の生産性が高まるはずです。
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